サブスクリプション
パフォーマンス
ベンチマークレポート

2022/2023

Pianoはデジタルビジネスを行う企業向けに、収益源をより強化・多様化するためのプラットフォームの提供、ならびにコンサルティングビジネスによる最適化の支援をしています。550社を超えるサブスクリプションビジネスに活用いただいている顧客のウェブサイト上で、毎月1,400億以上のページビューで施策実行がなされているPianoの顧客規模は他に類をみません。このデータを分析することで、各ウェブサイトのサブスクリプションビジネスにおける、顧客行動の独自の知見を見出すことができます。

Pianoはこのデータから、サブスクリプションビジネスを成功させるためのエッセンスを抽出し、Pianoが提供するソリューションのフレームワークを形成することで、顧客を成功へと導いています。Pianoが行う戦略的な判断は、いずれもデータドリブン型であり、顧客企業の皆様にも同様のデータドリブン型でのサポートを提供しております。

2021年、初めて業界全体にPiano独自のサブスクリプションの基本指標をまとめた、「サブスクリプション・パフォーマンス・ベンチマークレポート」を公開いたしました。これらの結果は今日においても、引き続き活用いただけるデータですが、今回は、何がコンバージョンとユーザーの定着率を促進し、何が妨げとなるのかをより深く理解するための指標をさらに詳しく紐解いていきます。

コンバージョンから顧客リテンションまでのカスタマージャーニー全体をファネルのトップからたどり、メディア企業が今日直面している課題を探ります。

Conversion

コンバージョンの阻害要因の克服


有料コンバージョン(以下、コンバージョン)は1つの過程です。さまざまな選択肢が与えられているユーザーを有料購読させるには、ユーザーが納得するためのサービスが必要です。

魅力的なコンテンツを提供することは当然のことながら最初の第一歩ですが、たとえ優れたコンテンツであっても、サブスクリプションビジネス成功への道のりには障害がつきものです。その正体をつかむには、まず、ユーザーが「どのように」「どこで」コンバージョンするのかを理解する必要があります。そうすることで初めて、成功へと繋がる施策や、ベストプラクティスを導入できるようになります。

それではコンバージョンや多くのパブリッシャーが直面する障害についてみてみましょう。

ロイヤリティのテスト

コンバージョンに至る期間

キーポイント:成功するサブスクリプションビジネスの構築は、「設定したら終わり」ではありません。施策やアプローチを継続的にテストし、最適化することで、サブスクリプションビジネスが成熟するにつれて雲泥の差を生みます。

デジタルサブスクリプションから出発したパブリッシャーの多くは、コンバージョンを促進するのはロイヤルユーザーだと考えるでしょう。ロイヤルユーザーはサイトの価値をより深く理解しているユーザーですから、これは理にかなっています。

しかし、実情はもう少し複雑です。

上のグラフは、サブスクリプションビジネスを開始した1年目に、ユーザーがコンバージョン前にサイト訪問した日数を示しています。2年目と比較してみてください。1年目は、かなりのロイヤルユーザーがコンバージョンしているのがわかります。コンバージョンの30%近くが、アクティブ日数10日を経過してから発生していますが、この傾向は2年目には変化し、コンバージョンの40%以上がウェブサイトの訪問初日に生じています。

これは、サブスクリプションビジネスの性質が時間の経過とともに変化していることに起因します。そのため、コンバージョンの促進をロイヤルユーザーのみに依存することにはリスクがあります。プロモーション価格や新サービスなど、様々な施策を検討することで、カジュアルユーザーにもサブスクリプションをアピールすることができます。さらにそれらの施策を時間の経過とともに変化させなければならないケースもあります。ビジネスのターゲットとするオーディエンスに変化が生じることがあり、初年度のサブスクリプションビジネスの成長時に採用した施策が、2年目には機能しない可能性があるからです。

デバイスが生む差

サブスクリプションのコンバージョンを最適化し、障害を取り除くには、ユーザーがどのようにコンテンツにアクセスしているか、またその過程で使用するデバイスについても把握する必要があります

デバイス種別によるコンバージョン低下率

キーポイント:サブスクリプション戦略の各側面が、「モバイル」と「デスクトップ」でどのように機能するかを理解し、課金プロセスの簡素化を目指す。

上に示すデバイス別のコンバージョン低下率に着目してみてましょう。有料オファーに対するクリック率は、モバイルとデスクトップでそれぞれ1.46% 、1.53%とさほど差はありません。しかし、実際に課金が行われた有料オファーの割合をみると、その差は歴然です。モバイルユーザーは、オーディエンスの65%を占めているものの、コンバージョン率は19.7%と、デスクトップユーザーの42.4% に比べてはるかに低い数値です。

その理由の一つには、モバイルユーザーは少しでも面倒だと感じるとすぐに決済を中断してしまう傾向が強いことが挙げられます。

決済プロセスを簡素化し、最初にクリックしてから課金を取りやめるまでの間に生じる、ユーザーが面倒だと感じてしまう「技術面での阻害要因」を取り除くことがポイントです。モバイルユーザーが離脱してしまう原因はそれだけではありません。モバイルユーザーには、独自のユーザーエクスペリエンス (UX) の他、デスクトップユーザーとは異なるコミュニケーション、価格設定、プロモーションがより効果を生む場合も多々あります。これらを順次最適化することで、より多くのモバイルユーザーをコンバージョンすることが可能となります。

複数チャネルからの流入によるエンゲージメント向上

コンバージョンまでのプロセス中の阻害要因について考えるとき、サイトにアクセスするためのチャネルについて理解することも重要です。有料コンバージョン数を改善するには、どのチャネルに対して最適化を行えばいいのでしょうか。

これについても、単純な問題ではないのが現状です。

例えば、Pianoでは従来よりSNSからのコンバージョン率が非常に低いことを認識しています。それに比べ、ダイレクト流入ユーザーのコンバージョン率がはるかに高くなります。それでも、サブスクリプションビジネスの成長にはどのチャネルも重要です。検索、SNS、ダイレクト流入を問わず、訪問者の流入チャネルの「数」こそが、コンバージョンに対して大きな影響を与えます。複数チャネルからの流入ユーザーは、シングルチャネルのみから流入したユーザーよりコンバージョン率が上回っており、利用チャネル数が大きな判断材料となっていることを示しています。

リファラー数別コンバージョン率

キーポイント:有料コンバージョンへの入口は、複数のチャネルを通じてユーザーとの強力な関係を構築し、エンゲージメント向上を重視したオーディエンス開発戦略の採用が効果的です。

上のチャートからわかるように、訪問者の利用チャネルが多いほど、コンバージョン率が高くなります。実際に、SNSと検索の両方からアクセスするユーザーのコンバージョン率は、1つのチャネルからアクセスしたユーザーの10倍も高くなる可能性があるのです。利用するチャネルが多いほど、ロイヤリティも上がります。

すべてのチャネルでエンゲージメントを最適化すれば、重要なコネクションの構築を促進でき、最終的に有料コンバージョン率を高めることができます。

Subscription

無料会員を有料会員に導くには


ほとんどのパブリッシャーにとって、有料コンバージョンは最終目標であるかもしれませんが、これが唯一のコンバージョンというわけではありません。一部のビジネスにとっては無料会員登録がもう一つの重要なコンバージョンであり、ユーザーがそこで止まってしまわない限りは、価値の高いものです。

幸いなことに、無料会員ユーザーは貴社ブランドへの強い関心をすでに示しています。時間を割いてアカウントを作成し、メールアドレスを提供しているということは関心を寄せている証拠です。それではどのようにして彼らを「有料コンバージョン」まで導けば良いでしょうか。

有料コンバージョンまでの過程

無料会員が有料会員になるまでにはどのような過程をたどるのでしょうか。

これは非常に重要な問題です。収益を最大化し、よりスムーズなカスタマージャーニーを構築するためには、ユーザーの行動を理解し、それらの行動がどのようにコンバージョンに結びつくのか、そして、それぞれのアクションの有効性を測定する必要があります。

無料会員登録から有料コンバージョンに至るまでの期間

キーポイント:ユーザーアクションの「真の価値」を理解するには、さまざまなタイミングでユーザーのアクションを測定し、各ステップにおけるコンバージョンを促進するための施策を実施することです。

例として上のチャートを見てみましょう。データによれば、有料コンバージョン(サブスクリプション契約)に至る無料会員の多くが、会員登録から24時間以内にアクションを起こしていることがわかります。最初の1か月の間にさらに多くのコンバージョンが発生しています。しかし有料コンバージョンの大部分、40%以上は最初の1か月以降に生じています。

それはなぜでしょうか?彼らは長い期間「無料会員」としてサイト訪問をしていますが、興味を引くプロモーションや、魅力的な有料会員限定コンテンツなどのきっかけがない限り、コンバージョンに至ることはない、ということなのです。

実施中の施策のA/Bテストや、カスタマージャーニーのステップに応じて、ターゲティングすることも有効です。例えば、機械学習を活用し、コンバージョンの可能性が低い無料会員を予測し、彼らに特別なプロモーションオファーを提供することが可能です。 最近サイト訪問をしていない無料会員にメールマガジンを送付し、プレミアムコンテンツを紹介して再訪を促し、それを繰り返すことでコンバージョンへと導く方法も効果的です。メーター制のサイトの場合はユーザーの回遊を促進してペイウォールへ誘導したり、フリーミアムサイトの場合は有料コンテンツへ誘導し、コンバージョンの機会を増やします。

無料会員を有料会員へと導くコンバージョン戦略を構築する上で重要なことは、コンバージョンへと繋がる各ステップでユーザーの行動パターンを理解し、その各ステップを最適化することです。

会員ユーザーのコンバージョン

多くのメディア企業にとって、会員登録は有料コンバージョンへの大きな一歩となり得るもので、下記のチャートを見ると、それがいかに重要であるかがわかります。アノニマス(匿名)ユーザーのコンバージョン率がわずか0.22%であるのに対し、会員ユーザーは9.88% となっています。

それはなんと45倍もの差です。

無料会員の有料コンバージョン率

キーポイント:自社サイトの会員登録を分析することで、有料コンバージョン率が実際に増加しているか、課金する可能性のあるユーザーを阻害してはいないかを確認することができます。

これらの会員ユーザーの大部分は、決済プロセスを開始したものの、最後まで完了しなかったユーザーです。こういったグループは全体的には少数ですが、再訪してコンバージョンの決済プロセスを完了する確率は高くなります。

無料会員登録による一部特典付与や有料会員登録に対してのトライアルを採用するパブリッシャーの場合、基本的に登録ユーザー数は多くなりますが、有料コンバージョン率は低くなります。それでもアノニマスユーザーのコンバージョン率に比べて平均10~15倍高い数値となっています。

ただし、これらの数字は保証されているわけではないことを念頭に置いてください。メールアドレス獲得が自動的にコンバージョンにつながるわけではありません。会員登録から1年以内に有料会員にコンバージョンする会員ユーザーは、平均約3%です。最も実績をあげているサイトでは12%のコンバージョン率、そして最も低い実績のサイトでは0.5%を少し上回る程度となっています。

サイトの会員登録分析により、サイトにとって何がベストかを理解することができます。現在の会員登録はサブスクリプションビジネスを促進しているか、それとも課金の妨げになってはいないか?最適な施策を見つけるために、様々なオプションを試してみてください。例として、アノニマスユーザーに会員限定コンテンツのオファーをする他、会員登録またはサブスクリプション契約で全コンテンツへのアクセスを提供したり、無料会員をターゲティングしたサブスクリプションオファーをするなどが考えられます。時間の経過と共に、どのアプローチが有料コンバージョンの増加につながるか、また、より高いLTV(顧客生涯価値)をもたらすかを判断することができます。

無料会員向けに熟考されたオンボーディングプロセスを導入したり、計算されたベストなタイミングでのプロモーションや、有料会員限定コンテンツでのオファーにより、価値の高いオーディエンスの継続的なコンバージョンが可能となります。

パーソナライゼーションと最適化

無料会員が有料会員へとコンバージョンするには、コンテンツに価値を見出す必要があります。ユーザーの嗜好にあったコンテンツへ誘導するためのコンバージョン施策として、ユーザーごとにパーソナライズされたレコメンデーション(おすすめ記事)の提供が成功につながることが実証されています。しかし、週に何千もの記事を公開している大手のメディア企業にとって、適切なレコメンデーションを適切なユーザーに届けるのは簡単なことではありません。それでは、どのようにしたら適切なレコメンデーションを各ユーザーに届けることができるのでしょうか。

レコメンデーションの最適化によるCTR上昇率

キーポイント:ダイナミック・コンテンツレコメンデーションを実装することで成果が上がる可能性があります。最初はクリックだけでも、最終的にはコンバージョンにつながります。

レコメンドのモデル(ロジック)として、トレンド(最もアクセスの多い記事)や、洗練されたコンテキストマッチング(読んでいる記事に似ている記事)などの多様なモデルが有効となりえます。1つのモデルに絞る必要はありません。機械学習を利用することで、自動的に有効なモデルを最適化し、複数のモデルを組み合わせて、ユーザーごとに最適なバランスを見つけることができます

Pianoのデータでは、このバランスを最適化することで、より高い実績を得られることが示されています。自動最適化されたコンテンツレコメンデーションのクリック率の中央値は、手動設定によるレコメンデーションより60%以上も高くなっています。

Engagement

有料会員のリテンション施策


サブスクリプション開始はゴールであると思われがちですが、実際にはユーザーとの長期にわたる関係の始まりにすぎません。サブスクリプション契約をしたユーザーは、貴社のブランドを評価しており、課金してサブスクリプションをするほど気に入っているという事実があります。目標は、そのポジティブな感情を維持しつつ、ユーザーのコンテンツ閲覧における習慣の構築と、その過程で強力な関係性を作り上げることです。

貴社のコンテンツへの興味をなくしたユーザーは解約し、他のもっと興味深いウェブサイトを探すでしょう。従って、有料会員との関係を構築し、定着率を維持することは、コンバージョンと同じくらい重要なことです。

休眠会員の再エンゲージメント

エンゲージメントをより深く理解するため、エンゲージメントの最も低いグループ、すなわち解約リスクの最も高いグループを見てみましょう。彼らは「休眠会員」と呼ばれ、有効なサブスクリプション契約をしていながら、過去30日間アクセスがみられない有料会員です。

休眠会員(サイト訪問がない有料会員)

キーポイント:サブスクリプションプログラムを通して有料会員のエンゲージメントを維持することが、休眠会員の増加を未然に防ぐためには重要です。

上のチャートが示すとおり、休眠会員は平均的なサブスクリプション・ウェブサイトの有料会員の40%以上を占めています。

休眠会員が解約に至るのは自然な流れです。彼らはサブスクリプションにさほど価値を感じなくなっていますが、すぐに解約するわけではありません。休眠会員の90%はそのまま非アクティブな状態を続けます。解約率が上がるのは、彼らがアクセスを再開したときで、一般的にはアクティブチャーン(ユーザー自らの意志で解約すること)のおよそ30% を占めています。

これが、休眠会員の再エンゲージメントを困難にしている原因です。解約する前に彼らのエンゲージメントを高めてから「目覚めさせる」ためにはどうしたらいいでしょうか。

アプローチの一つとして、主要なニュースイベントや、特に魅力のあるコンテンツを、再エンゲージメントへのきっかけとして活用する方法があります。新型コロナウイルスによるパンデミックの初期、Pianoの顧客企業の一部が所有するウェブサイトでは休眠会員の割合が25%減少し、エンゲージメントの高いユーザーが増加する現象がみられました。.

こういった有料会員が非アクティブ化する前にエンゲージメントを促進し、サイト閲覧の習慣を構築して、そもそも「眠りに落ちない」ようにすることが重要です。サイト訪問を彼らの生活のルーティンにすることで、これらのユーザーが休眠する可能性を減らすことができます。

アクセス方法によるエンゲージメントの差異

コンバージョンへの過程ですでに見てきた通り、ユーザーがサイトにアクセスする「方法」が、エンゲージメントのレベルを示している場合があります。特定のチャネルは他のチャネルよりも高いエンゲージメントを示し、そのチャネルからの流入へ誘導することでエンゲージメント向上への道筋を作る可能性があります

同じことが有料会員にも当てはまります。

有料会員のエンゲージメント

キーポイント:コンテンツにダイレクト流入してきた有料会員に優れたユーザーエクスペリエンスを提供することで、ウェブサイトに再訪させる習慣を強化し続けることができます。

例えば、検索やSNSからサイト訪問した有料会員は、月に2日のみのアクセスなのに比べ、メールからの流入では、月に3日とわずかにアクセスが多くなります。ウェブサイトへのダイレクト流入は、有料会員のエンゲージメントがさらに高い傾向にあります。ダイレクト流入による有料会員は月に平均6日アクセスしており、他の参照チャネルよりもはるかに多くなっています。

ただし、ダイレクト流入はエンゲージメントを高める可能性があるものの、「コンバージョンまでの過程」と同様、有料会員にとってマルチチャネルエンゲージメントは不可欠です。有料会員は優れたユーザーエクスペリエンスを期待しているため、常に洗練されたエクスペリエンスを提供することが、エンゲージメントを維持するための習慣の構築につながります。

Churn

解約を最小限に抑えるには


有料会員のエンゲージメントを維持することは、彼らを引きとどめるための第一歩にすぎません。有料会員が離れる理由は様々ですが、その一部は他に比べて原因解明が難しいものです。支払いエラーや更新手続きがされていないという理由や、契約直後に自動更新をオフにしたケース、契約した初日の解約まで、解約には様々な形態が考えられます。

以下で解約に至る原因を紐解き、カスタマージャーニーを最適化して定着率を向上させる方法を探ります。

トリガーポイント

休眠会員が解約リスクの高いグループの1つであることは先に紹介しましたが、それ以外でどのようなユーザーがハイリスクなのでしょうか。それはサブスクリプションを始めたばかりのユーザーです。

意外なことかもしれませんが、アクティブチャーンの3分の1近くがサブスクリプションを開始した最初の24時間以内に発生しています。ある特定のコンテンツだけにアクセスするために有料登録した場合や、提供された有料特典が期待に沿わなかった場合など、新規有料会員は解約リスクが高くなります。従ってこの時期がエンゲージメント構築において極めて重要な時期となります。

24時間以内の解約率(アクティブチャーン)

キーポイント:ユーザーとウェブサイト間のコミュニケーションがもたらす成果を過小評価しないことです。明確な特典のあるオファーを取り入れた、オンボーディングキャンペーンを早期に導入することで、新規有料会員との関係性を構築し、解約を防ぐことができます。

サブスクリプション契約をしたら有料コンテンツを閲覧してくれるだろう、と決めつけるのは危険です。習慣を早期に形成させるため、実績のある施策を採用した、熟考された計画が必要となります。メールマガジン、編集部からのウェルカムレター、モバイルアプリのダウンロード、ポッドキャスト、サブスクリプション特典のリマインダーに加え、初週と初月に複数のリマインダーメールを送信することで、オーディエンスのエンゲージメント向上が実証されています。

支払いに関する問題

ユーザーが解約をする際、自らの意思で解約する「アクティブチャーン」がほとんどですが、「パッシブチャーン」と呼ばれる理由で退会するユーザーも多くいます。これは支払いエラーなどによる自動解約で、ユーザー自らの意志ではないものです。支払いに失敗すれば、必然的に解約となってしまいます。

支払いエラーには次の2種類があります。

  • 「hard decline」は、銀行が支払いを承認しないことによる支払いエラーです。主にクレジットカードの盗難で、カードを無効にしたことなどが原因です。
  • 「soft decline」は、上記以外の理由でトランザクションに失敗したことを意味します。残高不足などが一般的な理由の1つに挙げられます。

メディア企業の場合、「soft decline」のほうが、支払い処理が再試行されれば成功率が高くなります。何度か再試行を繰り返した後に「残高不足」で拒否されたクレジットカードであっても高い成功率を示しています。「hard decline」も見込みがないわけではありません。事実、成功率は2桁であることが一般的です。

PayPalでの支払いエラーの割合

キーポイント:明確な支払いエラーの対策を立て、顧客維持に努めましょう。支払い拒否に対する再試行期間の指定や、期限切れの支払いに関する事前のお知らせの他、プロモーションオファーとして特典提供をすることでウィンバックを狙うことができます。

PayPalを例にとってみましょう。上のチャートを見ればわかる通り、すべての支払いエラーの60%近くが、ユーザーがPayPalのプラットフォーム内の「自動更新機能」を無効にしていたのです。

これらを詳しく理解することが、解約を最小限に抑えるための戦略構築に役立ちます。カスタマージャーニーを深く理解することで、新しい施策を導入してユーザーを定着させることと同じ道理です。

Attribution

アトリビューション分析


本レポート全体を通して、ユーザーが有料コンバージョンとそこに至るまでのそれぞれの過程において、サイトにどのようにアクセスしているのかをみてきました。しかしそれ以外にも興味深いデータがあります。ファーストタッチアトリビューションとラストタッチアトリビューションです。

この2つを調査するため、Pianoはユーザーが最終的にコンバージョンしたアクセスの参照元を見て、ラストタッチデータを調べました。それから「ファーストタッチ」、すなわちユーザーが最初にサイト訪問した参照元に遡ってデータを分析しました。

ラストタッチアトリビューション

これまで見てきた通り、ダイレクト流入によるユーザーは、はるかにコンバージョン率が高くなる一方、SNS経由はコンバージョン率が低くなります。これは、Pianoのラストタッチデータを見れば明らかです。サブスクリプション・コンバージョンの最も大きな割合をダイレクト流入のユーザーが占め、検索(主にGoogle経由)がこれに続きます。上のチャートが示す通り、Facebook(最大のソーシャルリファラー)経由のコンバージョンは、はるかに低くなっています。

しかし、ファーストタッチデータを見ると、結果は大きく異なります。コンバージョンする新規訪問者の参照元において、検索がダイレクト流入と同じくらい重要な割合を示しています。さらにFacebookの影響力も10%以上と劇的に増加しています。

ファースト&ラストタッチアトリビューション

これらのパターンの理解と、自社の顧客ベースで見られる数値を把握することがカギとなります。企業間で結果は異なっても、重要な知見を得ることができます。例えばSNSで、「ラストタッチ」ではコンバージョンに至っていないとしても、「ファーストタッチ」から見ると新規訪問者をナーチャリングするのに有効です。また、検索は、新規訪問者の獲得とコンバージョンの両方に効果的です。ダイレクト流入のユーザーの場合は、初めはブランドをよく認知していないことから始まり、カスタマージャーニーをたどりエンゲージメントが向上していくことにより、「ラストタッチ」ではコンバージョンに大きな影響力を持ちます。検索やFacebookなどの流入ユーザーをダイレクト流入へ誘導するための施策についても検討することが重要です。

まとめ

ユーザーの定着率を上げ、アクティブな有料会員を増やすためには、メディア企業は有効な施策でエンゲージメントを促進し、ユーザーを会員登録へ、そして有料会員へと導く必要があります。本ベンチマークデータは、サブスクリプションビジネスの成長をサポートするために実施する施策を、最適化するためのご支援ができるようにデザインされたものです。施策を継続的にテストすることにより、どのような方法が有効なのかが見えてきます。そして、ユーザーを有料会員へと、さらに生涯にわたるサポーターへとコンバージョンすることが可能となります

Pianoについて

Piano社は企業のデジタルビジネスにおいて、顧客行動を理解し、次のアクションへと促す知見やロジックを提供しております。顧客データの統合、行動指標の分析、パーソナライズされたカスタマージャーニーの構築により、キャンペーンや製品の迅速なローンチ、顧客エンゲージメントの強化、単一のプラットフォームで大規模なパーソナライゼーションを実施できるよう支援をしております。 オランダ・アムステルダムに本社を置き、米国、欧州、アジア太平洋地域にオフィスを構えています。国内では毎日新聞社・産経新聞社・読売新聞社・日本経済新聞社・日刊スポーツ新聞社・報知新聞社等の新聞社や、集英社・講談社・扶桑社・日経BP等の出版社を含む、各種メディア企業を中心に導入いただいており、グローバルでは、エールフランス・BBC・CBS・IBM・ウォール ストリート ジャーナルなど、世界1,000社以上の主要メディアのウェブサイトのオーディエンス獲得と収益向上を支援しています。そしてWorld Economic Forum、Deloitte、American City Business Journalsなどにより、世界で最も急速に成長中であり、最も革新的なテクノロジー企業の一つとして認められています。

詳細はPianoコーポレートサイトをご覧ください。